研究概要 |
本研究では,舌手術による発話障害を予測してその障害の最小化を図ること及び効率的な発話訓練の補助手段を開発することの両面から疾患による発話障害の解決策を求めた。そのため,発話運動シミュレータ(計算モデル)を用いる発話障害予測および発話訓練支援システムを構築することにした。本年度では 1.計算モデルを用いる舌癌術前後の舌動きの模擬と予測,及びその臨床検証 構築した発話運動シミュレータを用い特定患者に対して手術前の舌の動きを模擬することによってシミュレータの有効性を確認した。舌癌切除手術による障害の予測について,計画された切除部位を発話運動シミュレータに入力して動きを模擬した結果を医師より事前評価を行う。その後,患者の状況を追跡して臨床観測によりシミュレータの予測を検証した。その結果,計算モデルによる予測は術後の状況とほぼ一致していることを確認した。 2.計算モデルによる音声生成の筋活動パターンの推定方法の開発 舌癌切除手術後の発話、嚥下障害は舌筋の損傷によるものが多い。術後の筋活動パターンまたは物理的な損傷による補償動作を推定するため,本研究では,まずシミュレータを用い健常者の発話時のデータに基づいて発話形状から筋の収縮パターンの推定方法を開発した。 3.発話運動シミュレータによる音声合成に関する研究 入力音声の音響特徴と発話シミュレータによる合成音声のそれとの差を最小化することにより発話状態を推定する。この様式での音声合成において,調音結合の実現は音声の自然さと直接関連している。本研究では,モデルベース学習方法を提案して観測された調音データから音声合成モデルのパラメータを学習した。
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