研究概要 |
先行研究で安静前の運動や温熱負荷により骨格筋の筋原線維タンパク質量の減少やミオシン重鎖アイソフォームの速筋型への移行を抑制できた.共焦点レーザー法による毛細血管構造の観察では,萎縮により欠損する吻合毛細血管の温存が確認された.これらの現象に共通して,熱ショックプロテイン(HSP72)の発現増加が観察された.そこで,本研究では分子シャペロン誘導剤(Geranylgeranylacetone, GGA)を用いて,骨格筋へのHSP72の発現について検討した.本年度はGGA(テプレノン)を経口投与し,骨格筋(ヒラメ筋)に発現の増加が認められるか検証した.200mg/kgのテプレノンを経口投与し,24時間後にはHSP72が約15%の増加を示した.次にMorey法による後肢無負荷中にテプレノンを毎日投与し,HSP72の発現の低下を減衰できるかについて検討した.その結果,廃用性萎縮筋ではHSP72が40%減少し,筋原線維タンパク質が低下したが,テプレノンの投与により,HSP72の減少が抑制された.これらの結果から,テプレノンは骨格筋へHSP72の発現を促すことが示唆された.骨格筋の廃用性萎縮を遅延させる可能性が示唆された.今後,テプレノンの投与量などについて検討を重ねて,筋タンパク質分解に関与すると考えられるリソソーム系,カルパイン系,ユビキチン-プロテアソーム系の関連や血管内皮細胞への関与などについて検討を行う予定である.
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