研究概要 |
本研究の目的は、世界中のスポーツ関係者の懸案事項である「ドーピング問題」を解決するために、選手・指導者・組織団体に対するアンチ・ドーピング教育を実施するための教材開発および支援システムを構築することである。具体的に本年度は,各国のアンチ・ドーピング教育、啓蒙運動の状況把握を行うと共に、本研究の中核をなす世界アンチ・ドーピング機構の倫理・教育委員会プロジェクトで作成した「アンチ・ドーピング実態調査」の質問項目を選定し,日本の体育系大学生や日本アンチ・ドーピング機構加盟競技団体選手への調査を踏まえて,教材開発の基礎資料を得ることであった。 本年度は、オーストラリア、スイス、中国、台湾、韓国の研究者らとの情報交換に基づき、資料収集とその分析が行われた。それによると、各国共に、トップのスポーツ選手を中心としたアンチ・ドーピング運動に取り組んでおり、特に、中国に関しては2008年の北京オリンピックへの準備とも相俟って積極的な啓蒙、検査活動が行われていた。それと同時に次世代の選手らのアンチ・ドーピング教育の重要性も指摘されていた。 また、ユネスコが提案したアンチ・ドーピング条約に我が国も批准したことによって、日本アンチ・ドーピング機構教育・倫理委員会を中心に青少年に対するアンチ・ドーピング教材の開発が進められることになった。 さらに、「アンチ・ドーピング実態調査」への予備調査によって、「医療や治療目的あるいは副作用のない薬物については使用を認めても良いのではないか」という意見を、相当数の選手が抱いている結果が出た。アンチ・ドーピングが単に選手らの健康だけではなく、競技の公正性、青少年への悪影響、スポーツ固有の価値の保持などからも、ドーピングが禁止されている旨を広く教育、啓蒙すべきであることが浮き彫りにされた。
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