研究概要 |
本研究では,表面筋電図(表面運動単位活動電位)逆解析により運動単位の構造推定を試みた.表面運動単位活動電位(表面MUAP)は筋周囲方向に並べた多点表面電極列を用いて計測した.計測した表面MUAPから,逆解析により等価電流双極子の深さと強度を推定した.逆解析は,MUAPモデルによる表面電位と,計測した表面MUAPとの差を最小にするパラメータ(深さ,強度など)を探索することにより実行した. 逆解析により推定された双極子数は1個のMUAPにつき3〜8個であった.推定された深さの範囲は,0.5〜7.7mmで,6mm以下の推定値が90%を占めた.また,推定された強度の範囲は,0.1〜230.9nAm(nano ampere meter)で,10nAm以下が80%を占めた.深さ推定値と強度推定値の平均は,それぞれ3.0±1.8mm,13.8±32.0nAmであった.あてはまりの良さの平均は81.4±8.6%であった. 次に,半径と筋線維密度をパラメータとする運動単位モデルを用いて表面電位を生成し,その逆解析により,深さと強度の推定値と運動単位の半径と筋線維密度の関係を明らかにした.この数値シミュレーションで得られた運動単位の構造と逆解析推定値との関係を,表面MUAPの逆解析結果に適用することにより活動運動単位の領域サイズと筋線維密度を推定した.皮膚表面から運動単位領域までの距離を0.5mmとした場合,推定された半径の平均は5.39±6.46mm,筋線維密度の平均は0.40±0.72fiber/mm^2であった.
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