研究概要 |
本研究の目的は,運動時の腹部内臓血流の調節における,セントラルコマンド(中枢指令)による見込み制御の関与」について検証することであるが,平成17年度には,実験I:能動運動(セントラルコマンドが有る条件)および受動運動(セントラルコマンドの無い条件)の負荷様式の検討,実験II:決められた負荷様式で能動と受動運動で脳内血流に相違が出現するのか否かの検討,実験III:能動と受動運動時における上腸間膜動脈血流動態の検討,という3つの実験を行った.実験Iでは,3種類の角度変化と角速度をもつ肘屈曲伸展動作を用いた能動と受動運動について,両運動の差違が明確にでる負荷様式を10名の被験者について検討した.測定した心拍数,平均血圧,心拍出量,一回拍出量の結果から,肘屈曲角度が50〜90°,角速度90°の場合に相違が明確に出ることが確認できた.このため,以後の実験にはこの負荷様式を用いることにした.実験IIでは,内臓血流の変化をみる前に,能動運動時と受動運動時に脳内活動を反映する脳血流に相違がみられるのかどうかについて検討した.超音波画像診断装置により,11名の左総頚動脈血流(CCABF)および左中大脳動脈血流速度(VMCA)の検討を行った.その結果,能動運動時には運動開始直前と直後におけるCCABFとVMCAが有意に増加した,一方,受動運動時にはこのような脳血流増大がみられなかった.この結果から,能動運動では受動運動にはみられない脳内活動があることが示唆された.実験IIIでは,能動運動と受動運動時の上腸間膜動脈血流変化を2名の被験者について検討した.その結果,能動運動と受動運動の間に相違がみられなかった.被験者数が少ないが,上腸間膜動脈血流の調節にはセントラルコマンドはあまり関与しないのではないかと推測された.
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