研究概要 |
【目的】本研究では、各年齢層の被験者をそれぞれ運動習慣の有無で分け、脳の形態を、核磁気共鳴画像装置(MRI)を用いて比較することを目的とした。【方法】被験者は、継続的な運動活動を行っていない者32名(非運動群、年齢61.5±4.3歳)と、近年3年間以上持久的トレーニングを継続している者38名(運動群、年齢59.8±3.7歳)を対象とした。両群とも医師による予備検査で社会的に健康と判断された。MRI(GEメディカル,SIGNA HORIZON MRI HI-SPEEDを用い頭部の撮影を行った。磁場強度は1.5テスラ、収集データポイントの数は256×256、有効視野220cm、スライス幅2mm,スライス間隔は0mmである。このMRI画像をSPM2を用いて解剖学的標準脳へ変換し、optimizedvoxel-based morphometry(VBM)法により両群間における脳灰白質量の比較を行った。【結果】被験者の身体的特徴に両群で有意な差は認められなかった。またVBM法による脳灰白質量は両群間で有意な差は認められなかった。この結果は、社会的に健康な中年は、脳の灰白質量は身体運動によって影響されないことを示す。しかし高齢者を対象とした先行研究では最大酸素摂取量と脳灰白質量に有意な相関が認められている。本研究の結果から運動経験だけではなく、有酸素能力を考慮した解析の必要性も示唆された。
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