研究概要 |
性ホルモンは主にアンドロゲンとエストロゲンかおる。性ホルモンの産生は男性では精巣よりテストステロン、女性では卵巣よりエストラジオールが主に分泌され、副腎からもデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)が分泌される。骨格筋における性ホルモンの生理作用は、筋タンパク同化作用、筋機能亢進やエネルギー代謝の調節など重要な役割を担っている。性ステロイドホルモン合成酵素は性ホルモンの代謝変換に関与する酵素であり、これらの酵素が働くことによって性ホルモンの合成が行われる。近年の報告によると、肝臓、腎臓、脳などの部位において、性ステロイドホルモン合成酵素の存在が確認され、このことは、局所での性ホルモン産生の可能性が示唆されている。しかしながら、性ホルモンが骨格筋局所にて産生されるか否かについては不明である。 本研究では、骨格筋細胞の初代培養を用いて筋細胞における性ホルモンの産生について検討した。ラット筋芽細胞から分化させた筋細胞に、DHEAおよびtestosteroneを10μM,100μM,300μM,500μM投与し、24時間後に細胞を回収した。性ホルモンの測定は、total testosterone、estradiolをEIA法により検討した。筋細胞にて、性ホルモン代謝合成に必要な酵素である17beta-HSD、3beta-HSD、P450aromの発現が検出された。さらに、骨格筋内のtotal testosterone、estradiolレベルは、添加したDHEAおよびtestosteroneの濃度依存的に増大した。本研究では、DHEAからテストステロンやエストラジオールへの代謝変換に働く酵素である3beta-HSD、17beta-HSD、P450aromの性ステロイドホルモン合成酵素が骨格筋培養細胞にて遺伝子発現が確認された。さらに、DHEAを介したアンドロゲンおよびエストロゲンの産生か濃度依存的に増大することが明らかとなった。以上のことより、骨格筋細胎内でtestosteroneおよびDHEAを代謝する酵素が存在し、性ホルモンの産生か認められたことから、骨格筋は性ホルモンを産生する臓器である可能性が示唆された。
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