研究概要 |
本年度の実験の目的は,片足サスペンジョン(ULLS)、が身体機能に及ぼす影響について検討することであった.被検者は健康な成人男性8名であった.被検者は松葉杖を使って20日間の日常生活を送り(Bergら(1991),左脚の体重支持活動および筋活動を限りなく少なくした.実験の前後には膝伸展による等尺性最大筋力(MVC),MRIによる下肢の筋体積,外側広筋の筋生検から得られたサンプルより分子生物学的手法による成長因子のタンパク量,片足の自転車運動中の最高酸素摂取量(VO_2peak)について検討した.膝伸展による等尺性最大筋力はULLS脚(実験脚)で555.7±75.5Nから426.1±67.6Nに有意に低下したが,nonULLS脚(非実験脚)においては有意な変化は認められなかった(前:592.5±68.8N,後:569.4±82.9N).大腿部の筋体積ではULLS脚の大腿四頭筋に有意な減少(1244.3±151.0cm^3から1147.0±119.1cm^3)が認められ,ハムストリングと内転筋群およびnonULLS脚においてはいずれも有意な変化は認められなかった.筋成長因子に関しては,筋肥大を誘導するSerum Response Factor(SRF)のタンパク量がサスペンジョン後に有意に低下した(39%の低下).呼吸循環応答については,ULLS脚のVO_2peakが35.1±4.5から31.5±3.8ml・kg^<-1>・min^<-1>(-9.7±10.0%)に有意に低下したが,nonULLS脚においては有意な変化は認められなかった.以上のことから,片足サスペンジョンは先行研究で報告されているような筋機能低下や筋萎縮をもたらし,また呼吸循環系機能の低下も引き起こすモデルであることが明らかとなった.
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