研究概要 |
本研究の目的は,筋小胞体(sarcoplasmic reticulum;SR)の機能の変化に焦点をあて,収縮による筋疲労から張力が回復するメカニズムを検討することである.Wistar系ラットを2群に分け,一方には10分間(10群),もう一方には120分間(120群),腓腹筋に電気刺激による収縮を片脚に負荷した.両群をさらに3群に分け,収縮直後(10-0群および120-0群),収縮終了30群後(10-30群および120-30群)および収縮終了60分後(10-60群および120-60群)に腓腹筋を摘出した,腓腹筋表層部からSRを含むタンパクを抽出し,以下の結果を得た.なお,刺激を与えない脚の腓腹筋をコントロールとして用いた. 1.SR Ca^<2+>-ATPase活性は,10-0群で25%,120-0群で26%減少した. 2.低下したSR Ca^<2+>-ATPase活性は,60分間の安静により10群では回復したが,120分群では回復しなかった. 3.SR Ca^<2+>-ArPaseに結合するfluorescein isothiocyanate(FITC)は,10-0分群では18%,120-0群では19%低下した. 4.低下したFITCの量は,両群ともに60分間の安静により回復しなかった. 5.カルパイン活性は,10群では変化がみられなかったが,120群では平均17%増加した. 以上の結果より,タンパク分解酵素であるカルパインが活性化されると,収縮により低下したSR Ca^<2+>-ATPase活性の回復が遅延することが示唆された.
|