研究課題
筋細胞の興奮収縮連関(E-C coupling)は、2種類の筋細胞内膜系(横行小管:T管と筋小胞体:SR)とカルシウム(Ca^<2+>)チャンネルによって、時・空間的に極めて緻密にコントロールされている生理機構である。これらの筋細胞内膜系-Ca^<2+>チャンネル複合構造体はCa^<2+> release units(CRUs)と呼ばれ、その微細構造の形態的特徴とE-C couplingの機能発現様式の関連性に関する研究が数多く報告されている。本研究では、骨格筋細胞の細胞膜を脱分極させた際のCRUs微細構造を電子顕微鏡により観察し、興奮収縮連関の機能発現がCRUsの形態変化によって引き起こされる可能性を検討することを目的とした。実験動物には、生後10週齢のWistar系雄性ラットを用い、Ringer液中にて長指伸筋(EDL)から筋束(筋線維数10〜20本程度)を摘出した。摘出した筋束を異なる濃度のカリウム(K^+)溶液中に浸漬して細胞膜を脱分極させた。膜電位はRinger液中で-85.9mVであり、30mMのK^+溶液中では-45.9mV、200mMのK^+溶液中では-1.6mVへと変化する。2種類のK^+溶液と処理時間を組み合わせることにより様々な実験条件を設定し、脱分極溶液処理が変化し、Z線からCRUsの微細形態変化を電子顕微鏡により観察した。細胞膜の脱分極に伴ってT管の走行形態が変化し、Z線からCRUsを形成しているT管までの距離が不均一となり、横断方向の連続性も失われた。さらに、脱分極に伴いCRUsを形成しているT管の太さが、脱分極の程度に依存して顕著に細くなるのが観察された。これらの形態変化は可逆性の変化であり。再分極に伴い安静状態の筋細胞と同等の形態(値)へと回復した。T管-SR間のジャンクショナルギャップの距離や細胞膜の厚さに、脱分極による形態変化は認めれらなかった。
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