最終年度にあたる本年度は、これまでの研究成果を包括的に整理することに加え、縦断的な体組成特性の変化に対する我々が作成した簡易推定法の妥当性を検証することを目的として実施した。 本研究では、我々が開発した2つの内臓脂肪面積簡易推定式(体幹部脂肪量を利用した方法と皮下脂肪厚から算出した身体内部脂肪量を利用した方法)における運動による内臓脂肪面積変動時の推定精度を検討した。これらの推定式における基準値との一致度をトレーニング前後それぞれで検討した結果、いずれの推定式も運動前後ともに基準値と高い一致度を示した。また、推定値の標準誤差に関しても、推定式開発時と同等かそれ以下であった。これらのことは、本推定式の個体間における基準値との一致度を保証している。内臓脂肪面積減少後にも同等な一致度が認められたことは、本推定式の交差妥当性に関する頑健性を示す結果とも解釈できるかもしれない。一方、変化量に関する基準値と予測値との一致度については、いずれの推定式も低かった。すなわち、この結果は、個人内変動に関する基準値との一致度は低く、本推定式を用いた個人内の内臓脂肪面積変動量の推定には限界があることを示している。本研究の結果より、我々の簡易推定式による内臓脂肪面積推定は、集団のスクリーニングなど横断的な利用には耐えうるが、個体内変化量の評価には限界があることが明らかになった。これは簡易推定法の限界を意味しているかもしれない。簡易推定法の長所・短所を理解した上での利用が重要である。 また、研究期間内における研究成果を整理し、成果報告書としてまとめた。
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