横隔膜運動ニューロン(MN)と最長筋運動MNを比較することで、活動量の異なる運動単位におけるMNの形態的差異を3次元的に調べることを目的とした。加えて、MNおよび神経・筋接合部の形態的加齢変化について検討した。 young(2〜5ヶ月)とold(約2年齢)のラットを用い、各ラットの横隔膜両側および最長筋に0.5%コレラトキシンサブユニットB (CTB)を注入し、ニューロンを逆行性にラベルした。その5〜7日後、環流固定を行い、脊髄(頸髄3〜6レベル、腰髄2〜4レベル)を摘出した。ラベルされたニューロンおよび筋線維上の運動終板に免疫組織化学的処理(Cy3ラベル2次抗体to CTB、ローダミンラベル・アセチルコリンレセプターアンタゴニスト)を施し、コンフォーカル顕微鏡を用いて観察分析した。以下のような結果が得られた。 1)youngラットにおける横隔膜MN表面積(5826±2013μm^2)は最長筋MN表面積(6212±2272μm^2)よりも小さい。 2)oldラットにおける横隔膜MN表面積(4238±1315μm^2)および最長筋MN表面積(4981±1755μm^2)はyoungラットに比べ有意に減少し、特に大型MNの割合が低下した。その要因の1つは1次樹状突起の直径の減少であると推察された。 3)oldラットの横隔膜レセプターarea/周囲area(48.2±10.6%)は、Youngラットの値(58.2±14.1%)に比べ有意に低い値を示した。 以上のように、加齢に伴うMNの萎縮およびendplateの空洞化が確認された。これらの変化は、老齢期の筋線維において見られる脱神経・再神経支配の過程に関連する現象と考えられる。今後、さらに高齢ラットにおける検討を行い、加齢変化のメカニズムを明らかにしたい。
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