横隔膜運動ニューロンとセロトニンをラベルすることにより、横隔膜運動ニューロンの形態的な加齢変化と呼吸中枢からの投射様式の加齢変化を調べた。また、筋線維タイプ別にendplateの形態的加齢変化を調べた。 実験にはyoung(8から10週齢)とold(2年齢超)のラットを用い、各ラットの片側の横隔膜に0.5%コレラトキシンサブユニットBを注入し、ニューロンを逆行性にラベルした。その4日後に反対側の横隔膜を摘出後、環流固定を行い、脊髄(頸髄3から6レベル)を摘出した。筋線維上に存在するendplateを、ローダミンラベルα-bungarotoxinで、筋線維タイプをFITCラベルAnti-Myosin Heavy Chainを用いて識別した。また、ニューロンを免疫組織化学に処理し、コンフォーカル顕微鏡を用いて観察分析した。 1)endplateの密度は、加齢に伴いすべての筋線維タイプにおいて有意に低下し、他の変化に先行して生じた。 2)oldニューロンの樹状突起直径は、Youngに比べ有意に低下し、細胞体面積の減少傾向も認められた。 3)oldニューロン上のセロトニン数および周辺のセロトニン数は、Youngの値に比べ少ない傾向にあった。 全筋線維タイプ上で加齢に伴うendplateの空洞化が進行し、その変化が筋線維の萎縮に先行することを確認した。さらに、endplateの加齢変化の程度は筋線維タイプで異なり、特にType IIx/IIb線維で顕著であることが明らかになった。我々の先行研究で見出された老齢期の横隔膜運動ニューロンにおける不安定な活動電位発生の主原因は、呼吸中枢から運動ニューロンへの興奮性入力の減少と考えられた。
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