本研究の実験1では、ラット横隔膜の神経筋接合部の機能を異なる年齢間で比較し、さらに代償的に生じた活動増大に対する適応能力の限界について検討した。実験2では、加齢に伴うリモデリングの限界について理解するために、横隔膜の神経筋接合部の形態的な経時変化を調べた。すべての実験においてウィスター系雄ラットを被験動物とした。実験1では、若齢(3カ月齢)、成熟(12カ月齢)および老齢(24カ月齢)ラットに対して、片側横隔膜に代償的活動増大を起こすために反対側横隔神経切断術が施された。2分間の連続刺激後の神経筋伝達欠落が、神経刺激による発生張力と筋刺激による発生張力の比較によって調べられた。実験2では、若齢から超老齢(30カ月齢)のラット横隔膜において、筋線維タイプを同定した運動終板の構造特性が、共焦点顕微鏡システムによる3次元構築像をもとに調べられた。 伝達欠落は加齢に伴い減少するという点である。また、若齢および成熟ラットの代償的に活動が増大した片側横隔膜においては、運動終板面積と遅筋線維の面積割合の増加に伴い伝達欠落の低下が認められた。一方老齢ラットにおいては、代償性活動増大により速筋線維の面積割合が増加したが、運動終板面積および伝達欠落に変化は認められなかった。2つ目の重要な結果は、運動終板体積と表面積には年齢グループ間の差は認められなかったが、超老齢ラットにおいて筋線維直径の変化がないにもかかわらず、type IIX/B線維の運動終板密度が有意に低下した点である。
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