研究課題
基盤研究(B)
好ましくない生活習慣は、メタボリックシンドローム(MetS)や動脈硬化など、生活習慣病の基盤となる病態をもたらし、ひいては冠動脈疾患や脳血管疾患などの致命的な疾患につながる。日常的な運動は生活習慣病予防に極めて有効な習慣であるが、個人差を考慮し、その効果を的確にモニターしながら運動の量や質を加減することが、より確実な効果をもたらす。本研究では、この運動効果を見極める手がかりとなる最適なバイオマーカーを探索することを目的とした。対象はMetS該当者と予備群の男性26名であった。対象者に週2回フィットネスクラブでの運動を指示し、日常生活でより多くきびきび歩くこと、階段を使うことなどを指導した。この運動介入開始前と16週間の介入終了後に諸検査を実施した。その結果、体重は平均6.1kg減少し、内臓脂肪面積は平均28%減少した。その他、MetS診断基準に用いられる検査項目すべてにおいて、有意な改善が認められた。粥状動脈硬化形成に直接関与するリポタンパクの指標であるsmall,dense LDLコレステロールとRLPコレステロールは運動介入後に有意に低下したが、その変化に個人差が認められ、運動効果のバイオマーカー候補と考えられた。有益なアディポカインであるアディポネクチンは有意に増加し、身体活動量の多寡とこの変化が有意な正相関を示したことから、マーカー候補の1つと考えられた。骨格筋由来分泌タンパク(マイオカイン)として、動物実験よりマーカー候補として抽出されたSPARCは、今回の運動介入前後では有意な変化が認められず、さらなる検討が必要と考えられた。しかし同様に糖代謝に対するマイオカインとしての意義が報告されているFGF21は明らかな低下を示し、運動効果の新規バイオマーカーとなる可能性が考えられた。今後これら新規バイオマーカーを活用して、的確な運動指導が行えるようになることが期待される。
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