研究概要 |
Apolipoprotein E欠損マウスより、動脈硬化特異的に発現が亢進する新規遺伝子を同定し、この新規遺伝子のヒトでの遺伝子のクローニングに成功したが、その後、この遺伝子は、ミトコンドリア局在シグナルを有し、ミトコンドリアに発現すること、この新規遺伝子を血管平滑筋細胞に導入して過剰に発現させると、アポトーシスを誘導すること、このアポトーシスの誘導にはチトクロームCの遊離に引き続くカスパーゼ9の活性化が関与することを明らかにしている(J Biol Chem, in revision)。また、アポトーシス誘導サイトカインであるFasリガンド(FasL)の白血球における発現量が高脂血症患者において、内皮機能障害を反映する臨床的指標になることを報告した(Hypertens Res, in press)。ミトコンドリアは、エネルギー代謝に重要な役割を果たす小器官であるが、糖尿病と深い関連がある。また、酸化ストレスの産生部位でもあり、老化機構や癌の発症機構とも極めて関係が深い。今回、ミトコンドリアに局在するASK1が高血糖による細胞老化の誘導に関係することを報告した(Diabetes, in press)。今後、新規遺伝子によるアポトーシスの機構をさらに詳細に検討するとともに、老化との関係についても検討する予定である。一方、現在、本学の学生である若い女性を対象として、生活調査、食事調査、身体活動状況の調査、さらに、インフォームドコンセントを得た学生において、遺伝子解析を実施し、疾患感受性を有する新規遺伝子のジェノタイプと生活習慣病のリスク因子、特に、インスリン抵抗性との関係について解析中である。また、現在、この新規遺伝子が実際にミトコンドリアの機能や動脈硬化の病態にどのような影響を与えるかを細胞培養系やノックアウトマウスの作製などの動物を用いた基礎研究を準備中である。
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