研究概要 |
新規動脈硬化特異的遺伝子(Apop-1遺伝子)を血管平滑筋細胞に導入して過剰に発現させると、アポトーシスを誘導すること、このアポトーシスの誘導にはチトクロームCの遊離に引き続くカスパーゼ9の活性化が関与することを明らかにした(J Biol Chem,2006)。動脈硬化巣において、血管平滑筋細胞にアポトーシスが起ると、プラークの不安定化を誘導する可能性が報告されているが、プラーク破裂は心筋梗塞の原因になることが報告されていることから、Apop-1が心筋梗塞の発症メカニズムに関与する可能性がある。また、その後の研究から、Apop-1を過剰発現させた細胞では酸化ストレスの産生が亢進すること、細胞老化が誘導されることを明らかにしている。今後、Apop-1の動脈硬化の病態において、どのような役割を果たすかを詳細に検討する。また、アポトーシス誘導サイトカインであるFasリガンド(FasL)の白血球における発現量が高脂血症患者において、内皮機能障害を反映する臨床的指標になることを報告した(Hypertens Res,2006)。ところで、ミトコンドリアは、エネルギー代謝に重要な役割を果たす小器官であるが、糖尿病と深い関連がある。また、酸化ストレスの産生部位でもあり、老化機構や癌の発症機構とも極めて関係が深い。今回、ミトコンドリアに局在するASK1が高血糖による細胞老化の誘導に関係することを報告した(Diabetes,2006)。今後、新規遺伝子によるアポトーシスの機構をさらに詳細に検討するとともに、老化との関係についても検討する予定である。一方、本学の学生である若い女性とその両親を対象として、生活調査、食事調査、身体活動状況の調査、遺伝子多型解析を実施し、疾患感受性を有する新規遺伝子のジェノタイプと生活習慣病のリスク因子、特に、インスリン抵抗性との関係について解析中である。また、現在、この新規遺伝子が実際にミトコンドリアの機能や動脈硬化の病態にどのような影響を与えるかを細胞培養系やノックアウトマウスの作製中であるが、平成19年度に完成予定である。今後、このマウスを用いた検討も行う。
|