研究概要 |
我々は、最近、Apolipoprotein E欠損マウスより、動脈硬化特異的に発現が亢進するApop-1を同定し、その後ヒトのApop-1遺伝子のクローニングに成功した。興味深いことに、この遺伝子を血管平滑筋細胞に導入して過剰に発現させると、ミトコンドリアからのチトクロームCの遊離を介してアポトーシスを誘導すること、このチトクロームCの遊離には、Bcl-2ファミリーが関与するVDACとは異なるPT poreを介すること、また、酸化LDLの構成要素である lysophosphatidylcholine(LPC)による血管平滑筋細胞の細胞死がApop-1に対するアンチセンスの導入で抑制されることを明らかにした(J Biol Chem.2006)。ところで、アポトーシス誘導シグナルである癌抑制遺伝子p53は、細胞老化を誘導するが、我々も、アポトーシス誘導シグナルapoptosis signal regulating-kinase 1(ASK1)が高血糖による内皮細胞の老化誘導に関与することを報告した(Diabetes 2006)。また、最近、Apop-1遺伝子を導入すると血管平滑筋細胞に細胞老化が誘導されることを明らかにしている。これらの結果は、アポトーシス誘導シグナルと細胞老化シグナルの共通性を示唆するとともに、Apop-1がこの両方のシグナルに関与する可能性を示している。その後の検討から,Apop-1遺伝子が血管だけでなく、心臓、筋肉、肝臓、脳などほとんど全ての臓器に発現すること、この遺伝子がコードするタンパク質がミトコンドリアに発現することが明らかになっている。現在,Apop-1コンディショナルノックアウトマウスを作製中である。今後、骨格筋や肝臓など臓器特異的にApop-1を欠損したマウスを作製して、動脈硬化モデルマウスや糖尿病モデルマウスと交配させて病態を臓器別に検討する予定である。
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