研究課題
基盤研究(B)
匂いにより風味が向上することはよく知られているが科学的な検証はなされていないことより、「こく」と表現される味の厚みや持続性を増強し嗜好性を高める効果を持つ匂い物質を探索し、かつその作用メカニズムを解明することを目的とした。スープ材料であるキャベヅなど数種の野菜類、セロリ、セルリアクの水蒸気蒸留物を調製し、それをチキンブイヨンに添加し、風味増強効果を定量的記述分析法による官能評価により調べた。すべての野菜類の香気に風味増強効果が認められたが、特にセロリおよび根セロリといわれるセルリアクの香気画分に顕著な効果が認められた。GC-MS-Olfactometryおよび官能評価を駆使し、主要な香気寄与成分を同定した。両者に共通でかつスープと同様に長時間煮込んでも安定なフタライド類およびセルリアクに特有の加熱香気成分であった2-methoxy-4-vinylphenolに焦点を当て、その含有量、閾値を調べ、添加量を決定し、2種類の方法により風味増強活性を調べた。ブイヨンに香気成分を溶かし、口に入れて吐き出させて調べる全口腔法と、口の中にブイヨンを入れておき、匂い成分をスープに触れないようガスとして口に導入し、レトロナーザルな匂い刺激を与え、スープの味への影響を調べる後鼻腔法である。香気成分は、最も含有量の多いsedanenolide単独と3種類のフタライド類混合物、2-methoxy-4-vinylphenolをさらに添加したときについて調べた。全口腔法において、フタライド類は単独でも十分風味増強作用を示したが、混合物のほうがより効果が大きいことが示された。一方、2-methoxy-4-vinylphenolの添加効果はほとんどなかった。後鼻腔法でも同様の効果が見られ、セロリやセルリアクの特有香気成分であるフタライド類は香気としての刺激により、「こく」といわれる風味増強活性を持っことが本研究で初めて明らかとなった。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (2件)
Biosci. Biotechnol. Biochem. 70(4)
ページ: 958-965
Biosci.Biotechnol.Biochem. 70 (4)