研究課題/領域番号 |
17300238
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研究機関 | 共立女子大学 |
研究代表者 |
木内 幹 共立女子大学, 家政学部, 教授 (00224890)
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研究分担者 |
田中 直義 共立女子短期大学, 生活科学科, 教授 (90099367)
村橋 鮎美 共立女子短期大学, 生活科学科, 教育助手 (60399227)
高橋 沙織 共立女子大学, 家政学部, 教育助手 (50398583)
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キーワード | カンボジアのシエン / シエンの現地調査と採集 / シエンの塩水 / シエンの細菌 / Bacillus subtilis / 臭い成分の分析 / ミャンマーのペーポ / 中国の豆鼓 |
研究概要 |
1.2006年2月23日から3月3日まで、カンボジア東北部で大豆発酵食品の調査と採集を行った。それぞれの調査地において、市場で製品の聞き取り調査を、工場で製造工程の調査を行った。カンボジアではシエンと称される大豆発酵食品が製造されており、調味料として使用されている。製造工程の概略は次の通り。大豆を煮ることにより軟らかくし、ザルなどの上に広げ、棚などにおいて発酵させる。この際、発酵スターターを加えている工場はなく、全て空中浮遊または器具に付着している微生物が増殖していた。2〜3日後に微生物が充分に繁殖したことを臭いの変化、攪拌した際の糸引きの度合いで判断した後、食塩水と共に瓶に入れ、一週間以上熟成させて製品としていた。一部の製品はサトウヤシの濃縮物を添加していた。製品には豆の粒が残っており、調理の際にはそのまま使用するため、料理にも豆が残っていた。揮発性物質をはじめとする成分の分析を行っている。 2.採集したシェンは38点で、工場で採集したもの16点、市場で採集したもの22点であった。その中には、豆が塩水に浸漬してある製品と製造の中間段階のもので豆だけで塩水がないものがあった。前者の塩水に浸漬してあるもの34点、後者の塩水に浸漬してないもの4点であった。それらの特性を調べるために、官能検査で臭いと色およびpHと食塩濃度を調べ、さらに、平板培養によって生息する細菌数を調査し、細菌の純粋分離を行った。前者の34点の中で甘口のものは9点、辛口のもの3点であった。前者の塩水のpHは、4.2〜6.4の間にあり、わが国のしょう油のpH(約4.5)と比べてやや高いものが多く、平均は4.8であった。後者の豆に10倍量の純水を加えてホモジナイザーで粉砕し懸濁液のpHを測定すると、pH4.6〜6.7であった。豆にはほとんど食塩は含まれていなかった。前者の塩水の濃度が約10%またはそれ以上であるということは、塩濃度が7%を超えるとBacillus subtilisが生育しにくくなることを利用していることを示している。分離細菌数は、38点の中で塩水を含んでいたものでは4.0×10^5/g〜2.9×10^<11>/gであり、塩水を含んでいないため10倍量の純水を加えて計数したものでは、2.9×10^<10>/g〜2.3×10^<11>/gであった。われわれは、昨年度ミャンマーで納豆類に属するペーポの採集を行い同様の調査を行ったが、ペーポの場合は1〜7%のものも数多く存在したことを考慮すると、納豆類の製造技術に関してはミャンマーのペーポ製造技術よりもカンボジアにおけるシェン製造技術の方が理にかなっており、高度であることが明らかになった。
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