研究課題
本研究は、高齢社会において増加している摂食や嚥下機能に障害のある者に適するように物性を調整した介護食品(液状から半固形状が多い)を、実際に口腔内に取り入れる条件で、口腔感覚粘度を直接計測することにより簡便かつ正確に評価することを目標としている。まず、市販されている介護食品のレオロジー特性を機器測定により分析した。厚生労働省や日本介護食品協議会で指標として用いている方法よりも、さらに大変形させたときの圧縮応力がより食べにくさを反映することを明らかにした。大変形時の応力がとくに食べにくさを表す食品は、肉類、蒲鉾や餅などのゲル類であった(論文投稿中)。さらに、今までに固形状食品の咀嚼圧計測に用いてきた多点シートセンサと同じ原理で、液状から半固形状の食品を摂食するときに口腔内にかかる圧力を計測した。食品試料を載せたスプーンに極薄いセンサを貼り付けて、食品を口腔内に取り入れるときに口唇により生じる圧力を動的に測定した。この方法は、被験者や測定場所を選ばずに、レオロジー測定機器と同じ単位での口腔内圧を表示できるのが特徴である。健常者での計測を経て、実際に口腔機能に障害がある患者に使用できるかどうかを確かめた。生まれつき口腔機能に問題がある者ではなく、脳卒中などにより中途で口唇部の機能に障害を生じた患者で、自分の意志で実験に参加を決められるボランティアにより、医師の協力の下に試験を行った。茨城県立医療大学附属病院において、摂食機能の回復期に段階的に供されている食品から嫌いな者が少ない食品(米飯、粥、ペースト粥、ゼリー、とろみ付きジュース、ジュース)を検査食品とした。これらの食品を、シートセンサを装着したプラスチック製スプーンに定量入れて、スプーンを固定し被験者に摂食させた。健常者による実験で求めた測定条件では、患者には合わない点も生じたため、実験プロトコルを再検討し、より圧力感度の高いシートセンサを用いる必要があると考えられた。
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