研究課題
本研究は、高齢社会において増加している摂食や嚥下機能に障害のある者に適するように物性を調整した介護食品(液状から半固形状が多い)を、実際に口腔内に取り入れる条件で、口腔感覚粘度を直接計測することにより簡便かつ正確に評価することを目標としている。食品試料を載せたスプーンに極薄いセンサを貼り付けて、食品を口腔内に取り入れるときに口唇により生じる圧力を動的に測定した。この方法は、被験者や測定場所を選ばずに、レオロジー測定機器と同じ単位での口腔内圧を表示できるのが特徴である。脳卒中などにより中途で口唇部の機能に障害を生じた患者で、自分の意志で実験に参加を決められるボランティア(男性6名、女性3名、平均年齢は56.7歳、麻痺側は右が6名、左が3名(何れも中枢性麻痺))により、医師の協力の下に試験を行った。茨城県立医療大学附属病院において、摂食機能の回復期に段階的に供されている食品から嫌いな者が少ない食品(米飯、粥、ペースト粥、ゼリー、とろみ付きジュース、ジュース)を検査食品とした。これらの食品を、シートセンサを装着したプラスチック製スプーンに定量入れて、スプーンを固定し被験者に摂食させた。摂食障害のある患者は、健常者よりも、口唇圧が低く、食品の物性に応じて口唇圧を変えることが少なかった。食材毎にピーク荷重値、その比率(非麻痺側/麻痺側)及び荷重積分値の比率を算出した。ピーク荷重の平均値は78g重であった。9名中8名でピーク荷重値比率が最大となった試料と荷重積分値比率が最大となった試料が一致した。ピーク荷重値と荷重積分値は、9名中7名で非麻痺側が麻痺側よりも高値を示し、その比率が、顔面神経麻痺の重症度をある程度定量的に表していると考えられた。比率が1未満となった2例では、取込み動作の観察から顔面神経麻痺の代償動作として、健常側口唇のみで取込みを行なう習慣が修得されていると考えられた。
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