研究課題
高齢社会において、摂食や嚥下機能に障害のある者が増加し、物性を調整した介護食品のニーズが高まっている。本研究では、食品を実際に咀嚼する条件で、直接計測することにより、口腔感覚を簡便かつ正確に評価することを目標としている。前年度までに、口腔感覚粘度を測定する簡易なデバイスを設計し、健常者と摂食機能に障害のある患者との差異を解析した。高齢であっても健常者は、若年者と咀嚼パラメータの相対値は類似していることが明らかになった。そこで今年度は健常被験者に、広い物性範囲から選んだ食品(乾パン、こんにゃく、ドライソーセージ、ソフトキャンデー、生ダイコン、たくあん、生ニンジン、茹でニンジン)を通常通りに試食させ、その際に閉口筋の筋活動と切歯部における下顎運動を計測した。物理化学的機器測定から得た28種の特性値と咀嚼計測から得た63個のパラメータとの関係を、体系的に整理した。咀嚼挙動は個人差が大きいため、被験者毎に8食品の咀嚼パラメータ平均値に対する相対値を計算し、このクラスター分析から9群が抽出された。各群を代表する咀嚼パラメータを選び、主成分分析を行ったところ、3つの主成分、それぞれ咀嚼周期及び咀嚼時間、咀嚼初期における最小開口距離、咀嚼力に関係するものが抽出できた。食品の変形度が比較的小さい(圧縮歪<50%)時の性質は、咀嚼挙動に影響せず、破壊特性は、咀嚼初期の挙動は変えるものの、咀嚼過程全体に及ぼす影響は小さかった。極めて大きい変形条件下での力学抵抗性力値が咀嚼初期の、付着性が咀嚼中期から後期の、咀嚼挙動に最も影響していることが示された。
すべて 2009 2008
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件)
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『食品技術総合事典』(食品総合研究所編)の「食物テクスチャーに対する高齢者の嗜好性」,「高齢者食の設計」,「そしゃく計測」(計3項目を分担執筆)(朝倉書店)
ページ: 80-83, 84-88, 461-464