本年度は、昨年度に引き続きOPPAを基礎にして、科学的資質・能力を育てる評価方法の開発と実践に関する研究を進めた。その成果は、日本理科教育学会第56回全国大会において、共同研究者とともに「一枚ポートフォリオを用いた小学生の推論能力の育成に関する研究-4年生『もののかさと力」の単元を事例にして-」他、4編を発表した。また、日本理科教育学会第45回関東支部大会において、共同研究者とともに、「ヒトの『消化』・『吸収』に関する理解の研究-中学校理科『人体』単元を事例にして-」他、3編を発表した。 研究代表者個人の研究としては、上記両学会において「学習履歴を重視した教育評価に関する理論的研究1および2」を発表した。 本年度の研究成果の概要は以下の三点になる。 第一は、研究分担者との共同研究である「授業効果の検証のための一枚ポートフォリオの活用に関する研究-高等学校生物『遺伝』単元を事例にして-」から、OPPシートに単語しか書けない生徒を対象にしてキーワードを使って主語と述語の入った文を書かせる指導を継続的に実施したところ、表現能力が高まってきたことが確認できた。 第二に、学習履歴を明確に把握することができるOPPAは、生徒が書いた内容に教師が適切なコメントを書いて毎時間返却することにより、中学や高校のような生徒とのコミュニケーションをとり難い場合でも、適切なコミュニケーション機能を果たせることが明らかになった。 第三に、OPPシートに生徒が記録した内容から教師の教育観、授業観などを読み取ることができた。これは、生徒の記録が「……を憶える」などというように記録していると、教師がそれを強調して生徒に働きかけをしていることがわかった。
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