研究概要 |
本年度の研究成果の概要は以下の三点になる。 第一は、「構成主義の考えに基づく授業・学習および評価に関する研究-素朴概念からOPPシートによる評価ヘ-」(第43回日本教育方法学会における発表)の中で、学習履歴を重視した教育評価はその理論的背景が構成主義の考え方に基づいていることを明らかしたことである。この研究では、構成主義の考え方が、学習者の素朴概念から始まる学習の変容過程がOPPシート収斂されていること、およびこれまでの実践から学習者に学習の意味を感得させることができることの裏付けを行った。 第二に、学習履歴を重視した教育評価は、これまでの評価においてほとんど不可能であった学習者の資質・能力を育成することができることを明確にした(堀「理科における評価」『理科の教育』Vol.56,No.12,pp.46-49,2007)。OPPシートを用いた評価では、学習前・中・後において絶えず明確な働きかけ、たとえば当該学習内容の最重要点を記録させるなどの働きかけを行っているので、その視点が学習者に明確になり、絶えず意識化が可能になり、要点を押さえる資質・能力を育成することができるようになっている。 第三に、OPPシートの大学における利用可能性を追求したことである(『第14回大学教育研究フォーラム発表論文集』pp.64-65)。学習履歴を重視したOPPシートは、これまで小・中学校および高校における有効性は検証されてきているが、大学においてどこまで活用可能かについての検討は行われてきていない。今年度は、その大学での活用可能性の研究を行ってみたところ、小・中学校および高校と若干異なる側面はもっているものの、ほぼ同じような結論を得られることが明らかになった。ただ、この点については、事例が少ないので、今後の検証が求められている。
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