本年度の研究実績は以下の三点にある。 一つめは、資質・能力を育てるという課題は、OECD-PISAの学力調査結果とも深く関連する課題であるので、2006年の調査結果を詳細に検討し、課題克服のための具体的提案を日本教育方法学会編『教育方法37』(共著、図書文化、pp.69-83、2008)にまとめた。OECD-PISAの結果より明らかになった課題を克服するためには、教科から総合的な学習の時間へという教育内容および学習活動の重要性、資質・能力の育成が可能な評価方法、つまり学習履歴を基本にすえた評価方法開発の具体例を指摘し検討した。 二つめは、学習履歴を重視した資質・能力の育成は構成主義の考え方に基づく授業論や学習論と深く関わっているので、「構成主義と理科教育」という論文を日本理科教育学会編集『理科の教育』(Vol.57、No.666、pp.12-17、2008)にまとめ、この考え方が世界的潮流となっており、授業論、学習論、学力論、評価論を見直す契機となっていることを論述した。 三つめは、学習履歴を活用して適切な資質・能力を育てるためには、教師が一人で自分の授業を改善できることが求められているので、そのための授業分析の視点と方法を明確にしたことである(「授業分析の視点と方法」広島大学附属小学校学校教育研究会編『学校教育』No.1095、pp.12-17、2008)。 上記研究実績は、いずれも研究最終年度の総括として位置づけられるものである。
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