研究概要 |
全4年計画の最終年度である今年度は、研究の総まとめを主たる目標に設定した。19年度までに得られた成果から、我が国の理科教育改革の指針は「メタ言語」の開発にあるとの見通しを得た。メタ言語とは世界観について語る言語のことをいい、この定義は、「世界観は使用言語に固有のものとして畳み込まれている」という言語観を受け入れれば、タルスキーによる本来の定義と矛盾しない。メタ言語は、西欧語“nature"と日本語「自然」の間に横たわる通約不可能性について語る機能を持つのである。 その機能を生かした理科授業を小学校理科において試み、それをトルコのクシャダシで開催されたIOSTE XIIIにおいて発表した。この試みは、学校教科としての「科学(日本では理科)」の教授言語の問題をも解決する可能性を持っている。すなわち、メタ言語使用に習熟した理科教師とは、科学的世界観を我が国の伝統的自然観との対比において語る能力を得ている理科教師を意味するから、非西欧言語を理科の教授言語として使用しても、児童生徒に概念上の混乱を来たす事がない。 最終年度の成果として特筆すべきは、この4年間の研究を通して得られた成果である“AnyLanguage Can Be The Medium Of Instruction Of School Science, But..."と題する論考である。この論考はThe World of Science Educationシリーズの1冊であるScinece Education Research in Asiaに収ぬられており、本書は2009年にAmsterdam/Taipei: SENSE Publishersから出版予定である。
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