研究概要 |
本研究の目的は,インターネット利用者が検索エンジンを用いた情報検索を行う際の思考過程と知識流通過程について,a)心理学的な観点から詳細かつ総合的に理解すること,b)教育現場におけるリテラシー教育に応用すること,c)情報システム開発におけるインタフェースの開発,改良に活用することの3つである.検索という認知活動の『最終生産物』として得られる検索結果だけでなく,その動的でインタラクティブな認知の『過程』を捉えるために,1)言語プロトコル収集,2)アイカメラによる視線探索の計測,という方法を用いた.2つの心理学実験を通じて,検索という問題を解くにあたり,必要な情報を互いに問い合わせつつ解決していく「知の伝達プロセス」を明らかにした.特に平成19年度は,国内外の学会・論文において昨年度実施した実験2のデータを分析し,成果発表をおこなった.データ分析にあたっては,得られた検索行動記録を,実験1と同様の手続きにより,分析可能なデータの形式に変換した上で,特に協調作業におけるコミュニケーション場面での「知の伝達プロセス」に着目し,問題解決に向けて生じるペア間の知識流通過程を明らかにすることを試みた.さらに,一昨年度・昨年度に実施した2つの実験の成果をふまえて,i)心理学:問題解決過程における人間の思考・知識流通過程に関するモデルの提示,ii)教育学:検索リテラシートレーニングプログラムの提案,iii)情報学:検索支援システムへの提言という3つの観点を含んだ,総合的なまとめを行い,報告書を作成した.
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