研究概要 |
本研究は,複合現実感技術を博物館の展示に応用した展示手法と,推定支援型展示手法の2つの新しい展示手法を提案し,そのシステム開発と実用化を図ることが目的である.当該年度においては,複合現実感技術を実際の展示や講演会で利用した実用実験を行い,そのためのシステムを開発した.まず,2007年8月に国立科学博物館地球館地下IFで「恐竜3Dぬり絵」という学習プログラムのイベントを1週間行い約300人の小・中学生がイベントに参加した.これは,本研究の成果の一形態としてWeb上でぬり絵をした恐竜の皮膚が自動的に3DCGの恐竜となって実際の化石骨格標本にアニメーションとして重畳表示されるものである.また,4カ所の図書館・社会教育施設で行われた夏休みの小学生を対象とした恐竜の講演会で,複合現実感を使用し,先述の博物館でのイベントと同等な機能を図書館で実現するためのシステムを開発した.博物館の展示室では1人ずつ交代で複合現実感体験するシステムであったが,図書館では1台のPCに対して約10名が同時に複合現実感体験できるシステムとした.また,2007年12月から2008年2月にかけては国立科学博物館の企画展「帰ってきたアロサウルス」において,アロサウルスの姿勢の新旧学説を複合現実感によって比較できるシステムを展示し実用化を図った.古い学説によって復元された骨格標本は資料の保護のためにも姿勢を組み直すことは難しく,貴重な資料はそのまま保護し,3DCGによって現代型の姿勢を展示するという試みであった.いずれの実践も,本研究の成果として実用化に至ることができた.
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