研究概要 |
本研究は,複合現実感技術を博物館の展示に応用する展示手法と,推定支援型展示手法の2つの新しい展示手法を提案し,そのシステムの実用化を図ることが目的である。本研究の最終年度であった当該年度においては,これまでに開発したシステムに加えてHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を使用するシステムを開発し,国立科学博物館地球館において実用実験を行った。まず,2008年7月と10月には,三畳紀の魚竜であるショニサウルスの頭骨の標本に合わせて全体像のCGを提示する実験を行った。このシステムにはビデオシースルー型のHMDと磁気式の位置センサーを使用した。10月版では床下にある標本に合わせていることを強調するために,し床の部分をマスクできるようにした。また2階と地下2階を無線LANで接続し,2階で塗り絵した画像を地下2階のショニサウルスのテクスチャとして表示することも可能とした。2009年3月には,ジュラ紀後期の恐竜であるオスニエロサウルスの骨格標本を対象としたコンテンツを開発し6日間のイベントを行った。イベントには約400人が体験した。このシステムには,ビデオシースルー型のHHD(ハンドヘルド型ディスプレイ)を使用し,位置合わせはマーカーを使用した。これは,他の展示会場でも容易にシステムを組める可搬型展示システムとするためである。本研究の4年間の研究期間では,さまざまな複合現実感展示手法を試行し,いくつかのイベント展示が行えるまでに実用性を高めることができた。また,推定支援型展示に関しては,恐竜の色や姿勢などをテーマにし,実際の学習プログラムにも組み込むことができた。今後の課題としては,システムの技術的進歩とコンテンツの質向上や学習効果の検証などがあり,引き続き継続して研究する必要がある。
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