研究課題
本年度は、研究期間の最終年度にあたり、研究の総括と公開に向けた下記の研究活動を実施した。(1)平成20年(2008年)は関孝和没後300周年に当たることから、それを記念したシンポジウム(於・日本科学史学会)を主催し、著書1点(共著『関孝和論序説』)を刊行した。シンポジウムにおいては、過去4年間にわたった研究活動の様子と概要を報告し、今後の和算史研究上の問題点を議論した。(概要については、『科学史研究』誌上にレポートを掲載した。)今後も書誌学的な情報の蓄積、ならびに関の数学の学説史的背景の探索の重要性が確認された。/(2)本年度の研究内容としては、関孝和の著作である『括要算法』(1712年)の出版状況の一端を明らかにするとともに、同じく「三部抄」といわれる著作群の書誌学的問題点を前記著作において公表した。いずれの場合も、従来の研究が看過してきた史料論的事実に基づいた成果である。/(3)英文論文として、関孝和の数学に関する社会的位置づけ、当時の東アジアの状勢に照らした評価を発表した。特に、近世日本において作成された和算関係資料の年代別出現数をまとめたグラフは、和算の歴史的展開を知る上で重要な情報となることが期待される。また、関孝和の著作そのものにも未だ数多くの解釈上の問題点が含まれていることを指摘した。これらの研究成果を踏まえて、現在、改訂版となる『関孝和全集』(岩波書店、近刊)の編集作業を進めている。2009年度内には刊行の予定である。
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HISTORIA SCIENTIARUM Vol. 18, No. 3
ページ: 185-212