研究概要 |
『原論』を中心とするギリシア数学文献の主要写本をマイクロフィルムで収集し,ディジタル化した.今年度の収集はギリシア語写が中心であったが,ラテン語,アラビア語写本も可能な限り収集した.この作業は次年度も継続する. ディジタル化した図版の画像から,計量的情報を抽出するための支援プログラムの試用版を作成し,およそ400枚の図版について,計量的情報の抽出作業を行なった.次年度はこのプログラムの機能を拡充し,今後の図版研究の基礎的ツールとなりうるものを作成する. 10月に津田塾大学数学・計算機科学研究所で開催された数学史シンポジウムにおいて,図版から抽出した計量的情報に関する最初の報告を行なった.この内容は同研究所報の論文として掲載される(本報告書作成時点では未刊). 1月に海外研究者3名を招き,国内の研究分担者,研究協力者とともにワークショップを行なった.主な議題は次のとおりである. (1)試用版プログラムに基づいて,プログラムに今後必要な機能について議論した. (2)試験的なデータ抽出から得られた知見について討論した.とくに『視学』(光学),球面幾何学に関連する図版について,一見誤りと思われる図を,複数の視点が一つの図にまとめられたものとして解釈する可能性が研究協力者の三村太郎氏から提示され,参加者から有益な作業仮説として,今後の研究でさらに検討することとなった. 3月に日本数学会年会において,本年度の研究成果を発表した.
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