研究概要 |
第二年度の今年度は,初年度から行なっている写本のマイクロフィルムの収集・ディジタル化の作業が,『原論』の主要写本についてはほぼ完了した.また,初期印刷本の調査も開始した. ディジタル化した図版の画像から計量的情報を抽出するプログラムは,昨年度作成したDiagramの改良と並行して,テクスト校訂プログラムと統合可能なScriptoriumを試作した.プログラムにはなお改良の余地が大きいが,diagramの改良版を利用した最初の成果として,『原論』第1巻の48個の命題に対し,6つの主要写本における図版を再描画し比較可能としたものを発表し(SCIAMVS誌掲載論文),また第3巻の36個の命題に対して,最も主要なP写本の図版を再描画して公表した(津田塾大学計算機科学研究所報).最終年度の次年度には,当初の研究計画どおり,『原論』の第4巻までのすべての命題について,10種類以上の写本の図版を再描画して公開できる見込みである. 一方,初年度の研究会で,視学(光学)や立体幾何学,さらに球面論に関する著作の図版が,独特の規約をもって描かれていることが指摘された.今年度はこのテーマを中心に11月に海外の若手研究者3名を招いてワークショップを行ない,この分野の著作の図版をさらに検討すべきであることを確認した.当初の研究計画で予想しなかった展開であり,全面的な研究は本研究の枠組では困難であるが,人的・金銭的・時間的リソースの許す限り,これらの図版についても研究をすすめ,成果を公表したい.
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