研究分担者 |
矢田 俊文 新潟大学, 人文学部, 教授 (40200521)
黒崎 直 富山大学, 人文学部, 教授 (60000494)
宇野 隆夫 国際日本文化研究センター, 研究部, 教授 (70115799)
中村 俊夫 名古屋大学, 年代測定総合研究センター, 教授 (10135387)
箕浦 幸治 東北大学, 大学院理学系研究科, 教授 (10133852)
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研究概要 |
日本では,地震は頻繁に起き火山活動も活発であり,自然災害を被った遺構や遺跡は多い.本研究では,遺跡における自然災害の影響を土壌の電磁物性と探査を主な手段として研究する.まず研究に使用する交流消磁装置と地中レーダ探査装置について,精度向上のための整備を行った. そして調査は,地震の影響を被った遺跡と洪水被害を受けた遺跡を主な対象として行った.富山県高岡市の石塚遺跡で見つかった液状化に伴う噴砂の残留磁化を測定し北陸地域の地磁気変動と比較した結果,A.D.750〜970年の時代が推定された.これは,石塚遺跡は越中に被害を及ぼしたとされる貞観地震(A.D.863年)の際に噴砂が発生し被害が及んだことを示している.レーダ探査も実施した結果,噴砂は地下1mの深度より生じていることがわかった. 富山市北東部の小出城遺跡は,戦国時代から安土桃山時代を中心とした時期の城館跡であるが,堀から地震の痕跡を示す小断層が見つかった.堆積層の磁化から断層のごく近傍が変形を受けていることがわかり,これは断層面が早い動きでずれたことを示唆した.断層の近傍には再堆積した土層があり,この領域の残留磁化から地磁気年代を求めた結果,小断層は,AD1858年2月26日に富山県内を襲った"安政の地震"に関連して形成された可能性が示された.富山県・岐阜県の県境を走る跡津川断層に起因した"安政の地震"について,『魚津在住言上抄』(成瀬正居編,金沢市立玉川図書館蔵)に,小出城近傍の地震被害に関する記述があり,本研究の手法はこれを実証できた.地震に関連する遺跡での研究は,江別市対雁遺跡と札幌市内の遺跡でも実施し年代推定が行えた.以上の結果は教育委員会刊行の報告書に載せている.また,本年度は,河川の洪水の影響を荘園の遺跡の大溝に貯まった堆積物の残留磁化から調べる研究も行い年代推定で成果を得た.
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