研究概要 |
2006年1月,日本の地球観測衛星ALOSが打ち上げられ,試験運用後,同年9月より通常運用が開始された。今年度の研究では,エジプトのサッカラからダハシュールにかけての砂漠地域を対象に,宇宙航空研究開発機構(JAXA),エジプト国立リモートセンシング宇宙科学局(NARSS),エジプト考古庁など,各機関の協力を得て,試験運用中のALOS搭載Lバンド合成開ロレーダPALSARを利用した衛星観測と地上(現地)における同時検証実験を行った。 実験では,地下探査におけるSARの後方散乱特性への関与が論じられている地上パラメータの中から,特にレーダの入射角,土壌水分率の関与に関する調査に主点をおき,2006年8月12日と同14日に2度にわたって実施した。レーダの入射角の関与に関する調査では,JERS-1のLバンド合成開口レーダによって既に発見されている未発掘のエジプト王朝時代遺跡Site No.29地点をターゲットに,PALSARの観測を異なるオフナディア角(36.9度および50.8度)で実施した。さらに,埋没遺跡存在地点の土壌水分率とレーダの後方散乱係数の関係を理解するため,PALSARの観測時刻前後のSite No.29地点における土壌水分率の計測を同時に行った。以上の調査によって,極めて乾燥した砂漠領域に存在する埋没遺跡とLバンド合成開口レーダの後方散乱特性との関係を検討する上で最低限必要な基礎データが取得できた。 現在,PALSARの後方散乱係数と地上計測データとの関連性を検討中であり,今後は調査地点をさらに増やし,衛星SARを用いた遺跡探査技術確立,および精度向上のための地上調査を継続する予定である。
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