研究課題
基盤研究(B)
本研究でとりあげた武器・武具類の多くは、海底という環境下で、通常とは異なる形で錆化が進行していた。特に鉄製品について、通常の保存処理でおこなうクリーニングは多くの場合非常に困難をともなうことが推測された。結果として、通常の資料化の方法では、考古資料としての検討に必要なデータの抽出にも大きな制約がともなった。そのため、通常の分析方法に加えX線透過撮影さらに、刀剣類と冑類についてはX線CTによる調査により内部の状態をより詳細に観察した。また、付属した漆については一部試料を採取し分析を行った。その結果、外観が変化し遺物の特定が困難なものについてもそのほとんどの特定が可能となった。まず、刀剣類については肉眼観察で認識できない、刀身の形態、刀装具の構造を非破壊非接触で復元し、同時代の刀剣類との比較検討を行うための情報化を可能とした。また、冑類についても同様の調査を実施し、外観からでは確認できなかった形状などの情報が確認でき制作技法などについても推測が可能となった。これらの結果のうち刀剣類については東アジア文化遺産保存シンポジウムで成果を発表した。それ以外には漆を含め有機物の14C年代測定を実施し、これらの遺物が元寇に起因する遺物であることが確認できた。加えて、刀剣類や鉄製遺品以外の金属性武器・武具類については蛍光X線分析を実施しその材質について調査し、その身元確認を行った。さらに、武具類に使用された漆の塗り構造や木材の樹種などを調査し、日常使用される漆器類との構造の違いについても検討した。その結果、武具類に使用されている漆膜は日常什器のような丁寧なつくりではなく、機能面を重視したものであることもわかった。最終的に報告書の作成に向け、これらの武器武具類の総合的な資料化を行い、その当時の身元確認と履歴について精度の高い調査を実施することができた。
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