初年度である17年度は、土地被覆に関する主要な2つの課題について、これまでの予備調査を整理しつつ、新たにより詳細な実態調査を手がけた。得られた結果の概要は以下の通りである。 (1)屋上緑化の温熱環境緩和効果の調査として、「さいたま新都心」における「けやきひろば」内とその周辺の気温や湿度、風向風速、大気汚染濃度および熱画像撮影などの調査を、春夏秋冬各季節について実施した。100m×100mのケヤキ林内の気温調査については、これまでとほぼ同じ傾向が得られた。すなわち、ケヤキで覆われた部分では日最高気温は相対的に低く抑えられ、日最低気温は逆にやや高めで、森林気候の特徴を呈し、とくに温暖期の日中の気温を下げる緩和効果が見られた。そのことはサーモトレーサーによる赤外熱画像にも顕著に現れている。周辺の埼玉新都心部のヒートアイランドとの関係では、「けやきひろば」内の気温は周辺よりも常に低く、その温度差は1〜2℃程度であった。風に関しては、周辺の高層建築物によるビル風が和らげられ、大気汚染濃度(二酸化窒素と二酸化炭素)の分布調査からはケヤキ林の大気汚染浄化機能が証明された。地上またはビルの屋上からの熱画像調査では夏(8月)ではケヤキ林の樹下で約35℃、樹間で37〜38℃、樹冠で約40℃、ビル屋上のコンクリート表面は40〜44℃であった。 (2)ヒートアイランド対策にむけて開発中の特殊舗装材での実験調査は立正大学熊谷校内において実施中で、芝生面を含む12種の特殊舗装面上の気温は、実験面が小さいので1.5m気温には差はあまりないが、30cm気温には違いが認められ、エコプレートとセラックに温熱緩和効果があることが示唆された。
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