研究分担者 |
藤沼 康実 国立環境研究所, 地球環境研究センター, 推進室長 (10219032)
小熊 宏之 国立環境研究所, 地球環境研究センター, 主任研究員 (10342734)
梁 乃申 国立環境研究所, 地球環境研究センター, 研究員 (50391173)
犬飼 孔 国立環境研究所, 地球環境研究センター, アシスタントフェロー (70391068)
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研究概要 |
北海道苫小牧市のカラマツ林は,2004年9月の台風により風倒壊被害を受けた。台風による大規模攪乱は,林内環境や植生に大きな変化を与え,森林の炭素循環を変化させる。本研究ではカラマツ林跡地において,1)渦相関法によるフラックス観測,2)自動開閉型大型チャンバーによるフラックス観測,3)生態学的手法による植生・バイオマスの調査,などを行い,台風による大規模環境撹乱がカラマツ林生態系の炭素動態に与える影響を明らかにすることを目的としている。 経験式による欠測補間を行い,NEP,GPP,REの年積算値を算出し,風倒害前(2003年)と比較した。風倒害後,GPPは約半分に減少し816 gC m^<-2> y^<-1>となった。REは1.2倍程度に増加し,1139 gC m^<-2> y^<-1>となった。NEPは-532 gC m^<-2> y^<-1>となり,風倒害前後で炭素シンクからソースに変化した。また,チャンバーによる観測結果によると,REとGPPは,それぞれ8,7月に最大となった。NEEは常に正であったが,7月にはほぼゼロとなった。観測期間(約5ヶ月)の積算NEEは128 gC m^<-2>であった。風倒前のカラマツ林のNEEと比べると,環境撹乱により生態系が炭素シンクからソースに変化したことを示した。 風倒壊被害を受ける直前のカラマツの全バイオマス(炭素換算)は43.0 tC ha^<-1>,広葉樹が13.9 tC ha^<-1>であった。この内,林外に搬出されたカラマツの幹は26.6 tC ha^<-1>であり,これは全カラマツバイオマスの63%に当たる。この結果,風倒壊により30.3 tC ha^<-1>のバイオマスが地表面に供給されたと推定された。風倒壊前(2001年)における下層植生(潅木除く)および風倒壊後における植生の年間最大地上部バイオマス(乾物重)は,風倒壊前が2.7t ha^<-1>,風倒壊後が4.4t ha^<-1>となり,風倒壊後の方が大きくなった。
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