研究課題
基盤研究(B)
本課題では沿岸底質に生息し、移動能力に乏しく様々な環境影響を最も受けやすい二枚貝に着目して、貧酸素、硫化水素、赤潮などによる影響を殻体運動(貝リンガル)や浮上運動等の行動および糖代謝物のプロファイル(貝メタボローム)で評価し、生態系の評価・監視・回復を目指した。<タイラギ>有明海北東部において夏場に大量斃死を起こし大きな問題になっているタイラギ(Atrina pectinata)を用いて貧酸素に対する影響を調べた結果、(1)貧酸素下では、タイラギ体内のコハク酸濃度が上昇しリンゴ酸の濃度が減少した。(2)斃死率が高い水域のタイラギではコハク酸の濃度が上昇していた。(3)室内実験でタイラギは貧酸素条件になると底泥から殻体を半分以上浮上させ、好気条件になると沈み込む行動をとるが、繰り返し貧酸素水に暴露すると沈み込み幅が減少した。よってコハク酸とリンゴ酸の濃度および浮上運動が貧酸素の指標となることが明らかとなった。<アサリ>1990年代より西日本沿岸域に出現するようになった二枚貝を殺す渦鞭毛藻Heterocapsa circularisquamaを、アサリ(Ruditapes philippinarum)に暴露してその殻体運動に及ぼす影響を貝リンガルにより測定した。その結果、H.circularisquama暴露(5細胞/ml以上)により殻開閉運動の頻度が顕著に増加し、500細胞/mlで開殻時間が有意に減少することが明らかとなった。以上の結果から、貝リンガルおよび貝メタボロームを用いて貧酸素や赤潮プランクトンによる生態系に対する影響評価が可能であり、水産環境の保全のため、本手法が有効であることが明らかとなった。
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