研究概要 |
本研究では、都市部で飛散・浮遊している花粉自体の物理的破壊による微粒子化(特に粒径<1.0μm)、大気汚染物質の沈着、それによる化学的変質等の影響について花粉飛散時期のサンプリングとモデル実験で解明し、花粉アレルゲンと人体呼吸器官の各部位に沈着する大気汚染物質の特定、都市部における花粉アレルゲンーディーゼル排出微粒子(DEP)を含む大気汚染化学物質による花粉症罹患への複合影響の相乗効果を科学的に解析し、免疫学的研究による生体影響評価手法の改善や、大気汚染状況・花粉アレルゲン情報化システムの構築にも貢献しようとしている。 埼玉県都市部と山岳地の大気浮遊粒子状汚染物質濃度とスギ花粉を含むスギ雄花の定量分析や、ガス状汚染物質暴露実験により、その沈着影響について評価した。地殻成分(Al,Fe,Ti)に関しては、強風により巻き上げられた地殻粒子や自動車等の走行による道路粉塵が都市部のスギ花粉を含むスギ雄花に沈着している事が示された。また、都市部のスギ花粉は山岳地のものより粒子状NO^-_3,SO^<2->_4,NH^+_4やガス状NOx,SO_2,NH_3が沈着していた事が分かった。上記の大気汚染物質が沈着したスギ花粉が、花粉症の症状に悪影響を及ぼす事が懸念され、これらの複合的な生体影響評価研究の改善の必要性を示唆した。 さらに、2004年から2007年のスギ花粉飛散期において、大気中に飛散したスギ花粉を捕集し、花粉本体からのアレルゲン含有粒子の放出を確認・検証するため、花粉表面からのユービッシュ小体の剥離や破裂などの形態変化の観察(走査型電子顕微鏡および免疫蛍光抗体顕微鏡法による観察)を行った。スギ花粉アレルゲンであるCryj1およびCryj2に着目し、それらの濃度を測定し、かつ粒径分布を把握することで、花粉本体よりも人体への健康影響がさらに懸念されている微小な(1.1μm以下の下気道へ侵入可能な)粒径に存在するCryj1およびCryj2を含む大気浮遊粒子状物質の時系列的な飛散挙動を調査し、その実態の評価を行った。
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