研究概要 |
温熱誘発アポトーシスの増強に関係する遺伝子について、ヘムオキシゲナーゼ(HO)-1を含めて網羅的に検討した。6-ホルミルプテリン(6-FP)は、細胞内で過酸化水素を生成し、温熱誘発アポトーシスを増強する。また、温度依存性フリーラジカル発生剤であるAAPHは細胞内にアルキルラジカルやアルキルパーオキシラジカル等を生成し、α-フェニル-tert-ブチルニトロン(PBN)は細胞内にNOおよびONOOを生成し、温熱誘発アポトーシスを増強する。これらによる温熱誘発アポトーシス増強に関わる遺伝子群の解析をcDNAマイクロアレイ法を用いて行った。 U937細胞を44℃,10分間温熱処理し、DNA断片化を指標にアポトーシスを調べたところ、約15%となった。これに、上記薬剤を併用すると約30%に増強された。このように同程度の増強効果を示す6-FP、AAPHおよびPBNの処理濃度を見出し、薬剤併用によるアポトーシス増感に関連した遺伝子発現を網羅的に解析し比較した。変化を示した遺伝子群の中で、HSPやアポトーシス関連遺伝子を選び、これにc-junを加えて、リアルタイム定量的PCRで確認した。 温熱単独ではBAG3,DNAJA1,HSPA1B,HSPA6,HSPH1,SEPW1,HO-1,およびc-junの発現が上昇し、CCL2が減少した。薬剤併用による増強で共通したのは、c-jun発現の上昇とHO-1の減少であった。AAPH併用では、DNAJA1とSEPW1が減少し、GADD45Bが増加した。PBN併用では、DNAJA1とSEPW1が減少したが、6-FP併用では発現が変化した遺伝子はなかった。活性酸素種の種類の違いを反映した遺伝子発現変化と思われる。HO-1は各種活性酸素・フリーラジカルの種類によらず温熱誘発アポトーシス増強時に共通して下向き調節される遺伝子であることが判明した。
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