研究概要 |
ヒトリンパ腫由来細胞株U937細胞にアポトーシスを影響しない温熱処理(HT,41℃,30min)を行い,37℃で培養したところ,速やかに熱ショック転写因子HSF1が活性化され,続いて熱ショックタンパク質(Hsp)70やHsp40のタンパク質の発現上昇が観察された.GeneChipマイクロアレイシステムを用いて解析したところ,938遺伝子(増加423,減少515)が1.5倍以上発現変動することが明らかとなった。次に,Ingenuityパスウエイ解析ソフトウエアを用いて変化する遺伝子群から機能の予測や遺伝子ネットワーク構築を行った.予想通り増加する遺伝子群にはHSPsなど数多くの折りたたみ不全タンパク質に反応する遺伝子が含まれた.また,酸化ストレスに関連する遺伝子群が明らかとなり,HTによる酸化ストレス誘導が遺伝子水準で明らかとなった.酸化ストレス遺伝子ネットワークの中には,ヘムオキシゲナーゼー1(HMOX1)やSTIP1等の7個の転写因子NRF2に関連した遺伝子が含まれた.また,酸化ストレスに関連するICAM1やDUSP1遺伝子の発現上昇も観察された.また,低強度超音波(1MHz,0.3W/cm^2,1min)処理,6時間(37℃培養)後に約14%のアポトーシスが誘導される条件で,GeneChipとパスウエイ解析を行なったところ394遺伝子(増加201,減少193)が1.5倍以上発現変動することが判明した.発現上昇遺伝子としてHSPsは殆ど認められなかったが,酸化ストレスに関連する遺伝子とそのネットワークは含まれた.この遺伝子の中でHMOX1やFTH1等の10個の遺伝子はNRF2に関連した遺伝子であった.また,ネットワーク解析によりHMOX1の発現にNRG1やNF2の関与が判明した.一方,両者に応答した酸化ストレス関連遺伝子を比較すると,HMOX1は共通したが他は全て異なり,U937細胞における物理的ストレスに応答する特異的遺伝子であると考えられる.
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