研究概要 |
近年、シックハウス問題や食物中の残留農薬など、一般生活環境で曝露する農薬に対する健康不安が社会的に高まっている。本研究の目的は、有機リン系及びピレスロイド系殺虫剤について、複数の殺虫剤による混合曝露を受けた場合の個人曝露量と尿中代謝物量との関係を明らかにすること、殺虫剤に曝露するヒト職域集団およびモデル動物で、神経系、生殖器系に関して尿中代謝物量と健康影響の量反応関係を明らかにすることである。平成17年度は、健康調査用の問診票を作成し、衛生害虫防除作業者を対象に8月(散布業務の繁忙期、n=77)、2月(閑散期,n=54)に調査を実施した。曝露評価として、血中コリンエステラーゼ活性とともに、作業翌日の早朝尿を用いて、有機リンの代謝物であるジメチルリン酸、ジメチルチオリン酸、ジエチルリン酸、ジエチルチオリン酸と、ピレスロイド系殺虫剤の代謝物である3-フェノキシ安息香酸を測定した(現在結果の解析中)。また、連結不可能匿名化したサンプルを用いて、有機リン殺虫剤の代謝酵素であるパラオキソナーゼ1遺伝子多型と4種類の尿中代謝物、血中及び尿中の8-ヒドロキシデオキシグアノシンの関係の解析が進行中である。 動物モデルによる実験としては、9週齢のWistar系雄ラット40匹を1週間馴化した後に4群にわけ、ジクロルボス0,5,10mg/kg、ダイアジノン3mg/kgを週6日9週間経口投与した。最終投与終了後、24時間尿を採取した後に麻酔下に大動脈採血をおこない、血球及び血清コリンエステラーゼ活性、生殖器を含む臓器重量、精子原液調整後の時間経過ごと(0,15,30,60分後)の精子運動性を測定した。現在、精子運動に関与するアデノシン3リン酸(ATP)の測定法を検討中であり、尿中ジアルキル酸とともに平成18年度にかけて測定・解析していく予定である。
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