DNA二重鎖切断で誘導されるヒストンH2AXのリン酸化が、クロマチン損傷部位を特定する分子タグとして機能し、それを目印にMDC1/53BP1センサーシャペロンがクロマチン損傷を検出している可能性を明らかにするために、分裂中期染色体上でリン酸化ヒストンH2AXおよびMDC1/53BP1センサーシャペロンのフォーカス形成を検出できる実験系の検討を行った。 放射線照射によるDNA二重鎖切断に起因した染色体異常は、照射直後は染色分体型の異常が、照射20時間後には染色体型の異常が観察されることを確認した。リン酸化ヒストンH2AXのフォーカスは、染色分体型の異常部位に確認されたが、MDC1フォーカスを同じ部位に局在することがわかった。さらに、染色体型の異常でも、リン酸化ヒストンH2AXおよびMDC1のフォーカスは局在し、その部位は染色体異常が確認されない個所であった。以上の結果から、照射直後にDNA二重鎖切断部位に局在するリン酸化ヒストンH2AXおよびMDC1は、照射後時間が経つにつれて必ずしも損傷部位に残存しないことが示唆された。 さらに、MDC1/53BP1センサーシャペロンが、放射線照射後初期の段階でどのような役割を果たしているかを明らかにするため、EGFP-53BP1蛋白質を発現する正常ヒト二倍体細胞を樹立し、X線照射後のEGFP-53BP1フォーカスをタイムラプス法により解析した。その結果、放射線照射後15分以内に形成される初期フォーカスは、その後30分の間に徐々にその領域が拡大することが判明した。さらに、この拡大したフォーカスには、ヒストンH2AXやその他のDNA損傷チェックポイント因子が共局在し、多重蛋白質複合体を形成していることもわかった。MDC1/53BP1センサーシャペロンのフォーカス形成に重要なATMによりリン酸化をATMの特異的阻害剤であるKU55933で阻害したところ、リン酸化ATMフォーカスが完全に消失した条件で、53BP1フォーカスは消失することから、MDC1/53BP1センサーシャペロンのフォーカス形成には、ATM機能依存的なリン酸化が必須であることが明らかになった。
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