研究課題/領域番号 |
17310039
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
八木 孝司 大阪府立大学, 産学官連携機構, 教授 (80182301)
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研究分担者 |
溝畑 朗 大阪府立大学, 産学官連携機構, 教授 (80090439)
川西 優喜 大阪府立大学, 産学官連携機構, 助教 (70332963)
中山 亜紀 京都大学, 工学研究科, 助教 (10335200)
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キーワード | 発がん性 / 変異原性 / 芳香族炭化水素 / PM2.5 / リスク |
研究概要 |
大気中に浮遊する微小粒子(PM2.5)の主たる起源はディーゼル車排ガスであり、その主成分は多環芳香族炭化水素である。 近年、大気浮遊粒子中に発見された強力なエームス試験陽性変異原物質3、6-ジニトロベンゾeピレン(3、6-DNB[e]P)の細胞に対する遺伝毒性を1、8-ジニトロピレン(1、8-DNP)と比較した。ヒト肝臓癌由来HepG2細胞に3、6-DNB[e]Pまたは1、8-DNPを処理し、姉妹染色分体交換(SCE)、小核誘導、γH2AX誘導、突然変異誘発を調べた。3、6-DNB[e]Pはほぼ飽和濃度の1μg/mL処理で、SCE、小核、γH2AXを有意に誘導したが、そのレベルはわずかであった。突然変異誘発も起こすかどうかの境界レベルであった。一方、1、8-DNPはいずれの指標によっても高くはない有意に遺伝毒性を示した。この結果はヒトとサルモネラの種差を示しており、ヒト細胞ではニトロ基が還元されにくく活性体になりにくいために遺伝毒性が低いと考えられた。 4-アミノビフェニル(4-ABA)はグアニンに付加体を作り、4-ABA-G付加体を1個だけ有するプラスミドを作成してヒト修復欠損(XP)細胞中で付加体を損傷乗り越えてDNA合成される(TLS)頻度を求めた。その結果、TLS率は30〜50%であり、大腸菌では80%が乗り越えられるという我々の以前の結果とは大きく異なった。この結果は大腸菌とヒトとの生物種差を反映しているものと考えられる。またTLSのうち突然変異の頻度は5〜30%であり、G:C→T:A変異の割合が大きかった。またTLS率に塩基配列特異性があることがわかった。 このように大気浮遊粒子の発がん機構の一部を明らかにすることができた。
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