人工の微生物共生系型複合系を構築するためめ模倣対照となる自然界の微生物共生系のモデルとして、これまで長期間純粋分離されずに継代培養されてきてきたChlorella sorohiniana IAM C-212株(IAM(東京大学分子細胞研究所)より分譲:クロレラと3種のバクテリアおよび1種のカビで構成されている)を研究に用いた。クロレラと微生物の相互間で行われているコミュニケーションにはケミカルコミュニケーションとフィジカルコミュニケーションの2種類が存在している。はじめに、ケミカルコミュニケーションの検討として、クロレラから共生微生物に供給されるEOC(Extracellular released organic carbon:菌体外排出有機物質)の成分を詳細に解析した。得られた結果を背景に、EOCの構成成分を模倣した人工EOC培地を開発した。開発した人工EOC培地を用いて自然界から細菌のscreeningを試みたところ、通常の培地ではscreeningすることができなかった新種の細菌(既報の細菌と16SrRNAの相同性が91-95%)を多数獲得することができた(人工EOC培地は新たな微生物の獲得に有用である事が示された)。 フィジカルコミュニケーションの検討として、クロレラと微生物が接着した状態で安定した共生系が保持されている点に注目し、クロレラが光合成により排出するゲル状粘着多糖物質(sheath)に共生微生物が包括されている間接的接着について詳細な解析を行った結果、sheathの構成主成分は、光合成により生合成された糖質と2価の金属である事が明らかとなった。今後、本研究で明らかにした機構を模倣する事で、安定した微生物共生系型複合系(単純な人工の活性汚泥)の構築が期待される。
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