研究概要 |
生物学的廃水処理プロセスにおける余剰汚泥削減に及ぼす、生分解性プラスチックを電子供与源とする脱窒活性促進および脱共役剤の影響を検討した。まず、人工下水で回分培養を行っている活性汚泥槽に生分解性プラスチックの一つであるPHBVを導入し、汚泥の増減と脱窒活性について調べたところ、硝酸除去率は上昇したが、汚泥に減少は認められなかった。そこで、BOD除去槽と硝化-脱窒槽の2槽に分け、後段にPHBVを投入して処理を行ったところ、PHBVを投入しないものに比べて30-40%の汚泥減少が認められた。次に、脱共役剤の影響を調べるために、種々のクロロフェノール及びニトロフェノールを添加して、汚泥の増減を調べた。その結果、用いた脱共役剤の中では、3,5-ジクロロフェノール(3,5-DCP)が最も汚泥削減に効果があった。様々な3,5-DCP濃度で活性汚泥を培養したところ、200〜400mmol/g汚泥(乾燥重量)の添加濃度で汚泥の増加がゼロになることがわかった。しかし、同時にBOD除去率も無添加に比べて70%程度に低下した。相対的BOD除去率を90%以上に止め、かつ汚泥増加を10%以下にするためには100〜200mmol/g汚泥(乾燥重量)の3,5-DCP濃度が適当ではないかと考えられた。さらに、生分解性プラスチックに対する3,5-DCPの吸着効果を調べたところ、低ガラス転移温度を有するPHBV,PCL,PBSなどが吸着能を有することがわかった。ポリ乳酸系プラスチックは温度を70℃以上に上昇させたときにはじめて吸着がみられた。これらの結果から、脱共役剤吸着生分解性プラスチックを用いる汚泥削減法の可能性が示唆された。
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