水、メタノールという基本的な水素結合性溶媒分子のクラスターを用いて、水素結合ネットワークの段階的形成について以下のような知見を得た; 1.プロトン付加水クラスター(H^+(H_2O)_n)をn=100までのサイズ領域でサイズ選択して赤外分光を行い、1個の余剰プロトンの存在が周辺の100分子が構成する水素結合ネットワークの形態を本質的に変えることを見いだした。 2.プロトン付加メタノールクラスター(H^+(MeOH)_n)の赤外分光を行い、その水素結合ネットワーク構造が水のそれとは根本的に異なり、二環構造を形態発展の終点とした単純な構造を取ることを明らかにした。 3.サイズ選択されたプロトン付加水-メタノール混合クラスターの赤外分光を行い、水主体、メタノール主体のそれぞれの系で異分子混入による水素結合ネットワーク構造の変化を調べた。その結果、以下のことが明らかとなった。(a)水主体の系に少量のメタノールを混入させた場合は、メタノール分子が水分子と互換的に働き、水のみのネットワークと同様の三次元ネットワーク構造を形成する。(b)メタノール主体の系に少量の水を加えると、ネットワーク構造の変化が生じる共に、メタノールから水へのプロトン付加サイトの移動が起きる。 4.ベンゼン溶媒和クラスターカチオンの赤外分光を行い、溶媒分子のプロトン親和力に応じたクラスター構造変化を見いだすと共に、求核置換反応中間体と見なせる新たな分子間共有結合形成を実証した
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