研究概要 |
研究計画を「汎用剛体微粒子シミュレータープログラムの開発」,「微粒子分散系のメゾ構造制御」,「シミュレーターを学術的な課題に適用する」の3つのサブテーマに分けて遂行してきた.「汎用剛体微粒子シミュレータープログラムの開発」においては,これまで報告されていない,スメクチック相における層内チルト構造が現れる点について検証した.その結果,これが平衡状態へ達する過渡的な構造として出現する,初期状態の秩序に依存して現れる構造であることが分かった.なお,シミュレーターのバージョンは5まで進んだ.このバージョンを最終バージョンとする事に決定した.企業との共同研究において,シミュレーターの拡張機能を用いて,液晶の界面現象の問題が検証できる事も示した.「微粒子分散系のメゾ構造制御」については,ナノクレイをポリフッ化ビニリデン(PVDF)にブレンドしたときに現れるPVDFの結晶化挙動とその強誘電性について調べた.その結果,クレイの表面にPVDFが強誘電性を示す結晶構造に結晶化することが確認された.この知見とクレイがナノメーターサイズであることを考慮し,この系が強誘電性を発現するのに最適と考えられるクレイのブレンド量および結晶化条件を検討した.その結果,PVDF/clay系ではpure PVDFよりも大きな強誘電性が観測された.「シミュレーターを学術的な課題に適用する」においては,計算機資源と計算時間の節約という観点から,いかに少ない分子数で,シミュレーションが可能かということを,分子モデルとして剛体冠球円柱を用いて検討した.その結果,分子数90と45の間で,目立った変化が現れる事を示唆できた。すなわち,このモデルを用いてネマチックの配向の秩序に関わる事を検証するのであれば,分子数が90程度は必要であろうと示唆する事ができた.
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