研究課題
基盤研究(B)
本研究課題め目的は主に単層カーボンナノチューブを用い、(1)注入キャリアを制御できるように状態密度を操作しつつその状態を安定に作り出すこと、(2)その状態で偏極スピンを単層カーボンナノチューブ中に注入しその集団運動を観測・制御することにある。本研究では最も効率よくキャリアを注入できる系として電界効果型トランジスタを選択しそこでのキャリア注入効率を上げること、注入キャリアが制御できる系をドーピングなどで作り出すこと、偏極スピンを強磁性電極から単層カーボンナノチューブに注入することの3点を具体的なマイルストンとした。はじめの2点に関しては十分にその目的を達成し、薄膜型単層カーボンナノチューブ電界効果型トランジスタとして世界トップの性能を達成した。また、この素子系においてTetracyano-p-quinodimethane(TCNQ)をナノチューブの内部空間に内包させることにより安定に正孔をナノチューブに注入できるp型トランジスタを世界で始めて動作させた。3番目の目標に関しては、まずナノチューブのスピン散乱長を見積もり素子構造を決定するために、単一電子トランジスタを作製・動作させ、その電子散乱長がおよそ200-300nmであることを見出した。その上で所謂非局所4端子測定をこの材料系に導入し、3.8Kという低温でスピン注入によると期待される外部磁場に対する抵抗のヒステリシスを観測し、スピン散乱長として90nmという結果をえることが出来た。
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